『海豚にのりたい』
その弐「カイザの章」
5
海
優作のその後は、大人たちに八つ当たりされるだけの存在だったと言ってもいいだろう。
中学こそ地元の学校に通ったものの、気持ちは常に不安定だった。その後、高校に行かせるお金がない、というのでバイトをしながら定時制高校へ通っている。少しでも家から離れていたくて、学校という聖域を作っただけだ。バイト代すら巻き上げられる、それを防ぎたくて。
夢も希望もない。ただ、逃げ場を求めただけだ。
いつか死んでやろうと、死に場所ばかりを探し求めた。
竜崎優作。高校三年生、夏。
今、逝くために見知らぬ海へと辿り着いた――。
著作:紫草