『祭囃子』
17
──読み終えるのを待っていたように、親父は過去を話し始めた。
山科のおじいちゃんから聞いた母さんが実の子ではないという事実は一体何を物語る。点と点が悲しい方へと結びついてゆく。そしてこの手紙が証明書だ。ここにある“光”とは親父ではなく、親父のお父さん。つまり光人さんのことだ。
どうりで何を聞いても教えてくれない筈だ。俺は今まで祖母ちゃんの前の旦那さんの名前が山科光人だということすら知らなかった。
「父さん、これ返す」
大きな溜息と共に手紙を差し出す。伸ばした手が、震えているのがはっきりと見てとれる。
「宝雪、大丈夫か?」
心配そうな親父の顔が見える。
そして、ゆっくり近寄ってきて親父は俺の体を抱き締めた。
俺は親父の服をくしゃくしゃに掴み、声を上げて泣き崩れた──。