『祭囃子』
26
重い話の結末は、ハッピーエンドとは限らない。おじちゃんに散々喜ばしてもらって帰ったものの、やはり、まだ問題は残っていた。蒸発し、戸籍の上では死んでいても親父とお袋は姉弟だった。この事実は何があっても消えないんだ。
俺は自分に流れる血のことを黙っているわけにはいかなかった。
親父の気持ちがほんの少しだけ分かった。ほんの少しだけど、痛いほど分かった。そんな気がした。確かに逃げ出したいと思うよな。
でも俺はワンクッションあった分、逃げ出さずに済みそうだ。その代わり、自分自身の足で出て行かなくちゃならないかもしれない。
誰にも云わない約束だった。
親父、許してくれ。
俺はマスターに全てを話そうと思った。
もしかしたら離婚することになるかもしれない。その可能性を含めて、俺は決心した。
どんな結末を迎えても決して後悔はしない。俺が若菜を愛していて、葵を愛しているという事実は何があっても変わらない。