毎年 桜が緑に変わる頃
その木は 綺麗な花を咲かせる
誰が名付けたのか
それは空気が澄んだように感じる 花水木だった
「今年も、ちどりさんの花水木が咲いてたよ」
ソファに深く身を沈め 雑誌をめくる音がする
その人の背に 声をかけた
ん!? と首をこちらに向けてくる
「もう、そんな時期か。早いなぁ」
彼の近くまで寄っていって 顔を見上げる
ちどりとは 近所でやってる和食屋さん
「ちょっと、お散歩。どう?」
「今からかぁ!?」
時計の針は 午前一時をさそうとしている
諦め顔で その場を離れようとすると
「花見に行くか、花水木の」
「それ、駄洒落のつもり!?」
「まぁな」
そう言いながら立ち上がり 頭をポンと叩かれた