〜刹那〜

「お母さん、“おいも”できたよ」
 配給の食事を少しでも美味しく食べてもらいたくて、和江は子供たちの為にサツマイモを蒸していた。
 長女は弟を背負い、和江を手伝っている。
 妹は隣の子と、お人形を手に遊んでいる。
「今日のお昼は、静かに食べたいね」
 そんな言葉が自然と漏れる。

 時に昭和20年8月9日午前11時1分、長崎。
 いつもと変わらぬ空の下のことである。
 そして、この直後…

著作:紫草

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