第十五話 信長

 旅立った文長に、付き従ったのは長隆だけだった。
「今は、たったひとりの家臣でも京に着く頃には膨れ上がる筈ですから」
 と彼は云う。
 でも私は、そんな史実を知らない。
 インターネットもない。
 新聞もない。
 まして真実なんて、どうとでも変えられる時代に私はいる。
 信長の噂は、ここまでは届かない。
 文長が今生きている保障は、どこにもなかった。

 織田信長。
 本当に入れ替わることができたなら、文長は戻ってこないかもしれない。

著作:紫草

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