旅立った文長に、付き従ったのは長隆だけだった。 「今は、たったひとりの家臣でも京に着く頃には膨れ上がる筈ですから」 と彼は云う。 でも私は、そんな史実を知らない。 インターネットもない。 新聞もない。 まして真実なんて、どうとでも変えられる時代に私はいる。 信長の噂は、ここまでは届かない。 文長が今生きている保障は、どこにもなかった。 織田信長。 本当に入れ替わることができたなら、文長は戻ってこないかもしれない。