何かのジョークにあったよね。
ここは何処、私は誰ってやつ。
冗談じゃないよ。正に、それだわ。
此処は何処よ。
山…だよね。とりあえず、分かるのは。
アスファルトはなくて、土ばかり。
見渡す限り電柱もないから、電気の通っていない場所。
この分じゃ、ガスも水道もありませんよって云われそう。
ガサッ
何? 何の音?
振り返って音のした方を凝視するも、何もない。
気味が悪かった。
兎も角、座り込んでいる場合じゃない。
私は、何処へ行く当てもないまま立ち上がり歩き出した。
試験最終日。教科書、辞書、ルーズリーフ、そして資料と、ありとあらゆる物を持ち帰る心算でバッグに詰め込んでいた。
(お、重い…)
ガサッ
再び、葉の動く音。
「誰?」
その時、丸っこい生き物が走り抜けていった。
「今の・・、狸?」
信じられない。私、今、何処にいるのよ。
その時だった。
「誰だ」
心臓が止まるかと思った、後ろから、そう声をかけられた時は。私は、ゆっくりと振り返る。
そして今度こそ、本当に心臓が止まったような錯覚を覚えた――。
貴男は誰、と私こそが聞きたかった。
「誰だ。また、落ちてきた者か」
「えっ?」
今、何て云ったの。私の中で何かがうごめいている。
落ちてきたって?
誰が?
何処に?
此処は、何処?
そして何より貴男の、その服は何?
それ、着物よね。着物を普段着にする処・・。
時代劇に出てくる、汚い身なりの男が一人。何とかって俳優に似てる。イメージは年をとった反町かな。
でもタイプじゃない。只のおじさんともいう。どう見ても貴男、普通に見えないよ。
私の頭がフル稼働しても、何の答えも得られない。
駄目だ。
分からない。
「文長。何か、あったか?」
ガサッと、三度(みたび)音がして、またしても着物の男が現れた。
も〜嫌!!