『お前が言うとさ。みかんが好き〜、パフェが好き〜、と同じレベルに聞こえるぞ』
昔、そんなふうに言われたことがあった。
告白――
純粋な年頃を過ぎ、恋が単純なものではなくなってゆく。
いろいろな柵(しがらみ)や、それぞれの暮らしが圧し掛かってくるように、それに伴って愛の言葉を使えなくなった。
素直に言うことが難しくなる。
同じ気持ちで通い合っていないんじゃないかと思ったり、より重く受け止められているんじゃないかと怯えたり。
でも、やっぱり想いはひとつだけ。
言葉だって、簡単でいいじゃない。
たとえ蜜柑やパフェと、同列に思われても…
伝えなければ、伝わらないもの。
「ね〜」
「何」
「大好き」
刹那。
思い切り瞳を見開いた後で、俺も、と返してくれた。
何年経っても同じように優しく笑ってくれる、きみが好き――。
【終わり】