『止む事無し魂の果て』

 明けぬ夜はないというのに。
 暮れる日を、疎ましく思う。
 一日がいつ始まり、そして終わるのか。床をとる時。はたまた眠りにつく時か。

 眠れぬ夜の続き。
 陽は昇り、陽が沈む。
 それは星の営み。

 人は、時計の針の上。
 自分の都合のいいように、昼を決め夜を決め、そして眠りにつく。
 抗うのは、誰。
 永遠の眠りを拒絶した人は、今、静かに眠る。

 目覚めぬ人。
 すでに幾年(いくとせ)。
 機械に繋がれるわけでもなく、只管眠り続けている。
 彼女には今、どんな時間が流れているのか。

 曰くありげな紛い物。
 恐れた自分の身代わりに、それを手にした彼女の強さ。
 待っていたのは、別れだった。
 原因不明の意識消失。
 心臓の鼓動はあるのに、生きてない。

 生きとし生けるもの。
 彼女の目覚めに手を貸してくれ。
 彼女の瞳を見られたら、どんな代償でも支払うものを。

 不老不死の仙薬。
 そんなものを信じた愚かな人。
 しかし、それを望んでしまったのは…… 俺。

 永遠の命など、ありはしないものを。

 愛しき人。
 どうか、目覚めて。
 この腕のなかに、戻っておいで。
 不老不死など最早望まぬ。共白髪を誓い合う。

 そして、この命果てる時。
 三界六道に輪廻する、互いの魂の邂逅を願おう。

 愛しい人の横顔に、今宵も夜の帳がゆるりと下りる――。
【了】

著作:紫草

NicottoTown サークル「自作小説倶楽部」より 2012年9月分小題【夜】
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