アーバン―都会的で、スタイリッシュ―洒落ていて、キュート―活発で可愛らしい人形を製造するアントワネット・ライン。
謎の人形師マクシミリアン・ロワゾーが作るオートマタ(自動人形)。
あなたは自動人形。
製造番号 M8453FE。
愛らしい容姿で、銀の髪をしています。
パーソナリティ機構に組み込まれたのは
【がんばりや】
【オーナーの秘密保持への関心】
オーナーは少年。
あなたを箱にしまいがちです。
#ドール・ジェネレータ
https://shindanmaker.com/829519
どうやらワタシはそこで造られたらしい。
というか、造った本人がそう書いた紙を箱詰めする時に入れていたのだ。間違いない。
記憶のスタートは電源を入れられた瞬間。そして自動人形であるワタシは壊れるまで動き続ける。
ほんの少しの手入れだけで、特に必要なものなどないのに。
一度だけ訪れた人形師のグランパは(おじいさまとか、じじいと呼ぶ者もいたが)、
『丁寧に扱われているね。これなら大丈夫』
と言い、その後の定期検査を不要とした。
しかし我がご主人様は、あれこれと心配なさる。
機械の状態だけではない。
外の景色の話をしながら、窓の近くは危険だと遠ざける。
同じ空間にいてくれと言いながら、落ちてしまうと大変だからと人形ケースに仕舞われる。
出したり入れたり、と忙しい時もあるが、出されたままという時もある。
そんな時は、とても近くにご主人様を感じる。
少年とも青年とも呼ぶことのできる不思議な魅力をお持ちの彼は、ワタシには勿体無いくらいの素敵なご主人様だ。
「エレオノール」
その優しいお声かけは毎朝決まった挨拶で、彼の向けてくれる笑顔は感情を持たぬ筈のワタシに、少しだけモヤモヤという思いを刻む。
『ご主人様』
ワタシも、そう言葉を発することができたらいいのに……。
その設定をご主人様は切ってしまわれた。
ワタシからの言葉を届ける必要はないのだと言わんばかりの仕打ちに、そこでも複雑な意味不明の思いを刻んだ。
そして、ある日。
気づいてしまった、彼に秘密があることを――。
彼はそれをひた隠しにしている。
他の誰にも悟られぬように。
ならばワタシもそれを守ろう。
ご主人様の秘密はワタシの秘密。
人知れず心を砕き、お客様の視線を逸らす。
心などというものが、ワタシに備わっているならば、の話だが――。
【了】
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DOLL HOUSE
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by ロワゾ―さん創作
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