『夜の虹』

 世の中には、面白い病がある。
 だって僕は、お日様を見ることは永遠にないから。
 ドラマや映画になったから、みんな結構知ってくれたけれど、近所にその病気に罹ってる人間が住んでるとは思わないんだよね。
 お母さんは、いつも謝っている。
 学校の先生にも。町内会の人にも。
 だって僕は、参加できないから。
 そのたびに、お母さんは謝っている――。

* * *

 夜が、僕の世界。
 僕は、夜の住人。
 みんな、知ってるんだろうか。
 夜の空気は静かで優しくて、朝が穏やかにやってこられるように地球を癒しているんだってこと。
 今は梅雨を待つ、初夏の手前。
 色とりどりの花たちが、花壇や山々を彩っている。

* * *

 無い物強請りのお願いは、神様に聞いてもらえるかな。
 僕は神様に選ばれた子供だって、お母さんがいつも言うから。
 たった一つの僕の夢。
 夜の空にも綺麗な虹が、僕に見えるようにかかればいいのに。

【了】

著作:紫草

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