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Penguin's Cafe
『秋の便り』


 ♪カラ〜ン
 耳に心地好い、鈴の音が店内に響いた。
『いらっしゃいませ』
 店主の低音も心地良く耳に届く。
『Penguin's Cafeへようこそ』

『ご注文は何に致しましょう』
 いつもはイケメンマスターのお出迎えだが、今日はバイトさんだ。
 秋は特別メニューのモンブランが出る。
 この季節はいつも大賑わい。
 少し前までは売り切れ終了ということも多かったが、ここ数年はアルバイトが入るようになりマスターはケーキ作りに専念している。

 お蔭で遅い時間に訪れても、希少なモンブランが食べられるようになった。
「モンブランとロシアンティを」
 かしこまりました、と去っていく後ろ姿を見送りながら、多分笑われてるだろうなと思った。
 いい年したおっさんがロシアンティなんて、とか思ってるだろう。

『お待たせいたしました』
 暫くしてバイトさんが戻って来た。
 かれこれ十年通っている店だが、これで二度目のモンブランだ。
『山岸様ですね。お写真、拝見しました』
 驚いた。カメラマンとして働いていても、名前を知られるほどではない。きっとマスターから聞いたのだろう。
「ありがとう」
『本日のロシアンティは少し甘みを抑えたジャムをご用意しました。モンブランを楽しんで下さいませ』
 彼女は言いながらカウンターの中にいるマスターを見る。

「いただくよ。神部君によろしく伝えて。この混み具合じゃ声をかけられそうもないから」
 承知しました、と彼女は去った。
 今年のモンブランも、絶品だ。
【了】

著作:紫草

NicottoTown「水曜コーdayショー♪」 2019年10月16日分お題 【美味しい秋】
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