〜夢〜

 これは夢。それは分かる。
 でも夢なら、覚めないで。
 ううん。
 覚めるなら、あと、もうちょっと待って。
 私、この人に逢いたかったの。
 もう、ずっと逢えなくて、きっと、もう二度と逢えないと思ってた。

 だから、これは夢。
 うん、それだけは分かる。
 だから、お願い。

 彼を事故で失った時、神様はいないと思った。
 一度は、いないと思ったけれど、でも、もう一度だけ信じるから。
 神様、お願い!
 私の最后の言葉を、彼に届けるまで。
 もう少しだけ、待って。

『私、貴方を愛してる』

 彼の、最期の笑顔が、脳裏に焼きつき残った。

【Fin】

著作:紫草 

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