届けられし 好いた女の想ひ知る
ほどく和紙 くゆる香りの戀文か
御簾の内に 足踏みいれる寸前の
あどけない声に 思わず微笑む――
※
薄闇に 潜みし男が影ひとつ
誰ぞ
思草君の問いかけに
扇で隠すかんばせと
匂ふ直衣に ほくそ笑む
菖蒲君の戀文を
そのままお持ちになりましたな――
※
御簾の際まで近づきて
その影すらを愛おしむ
この容姿に惑うことなく
異形の者と誹ることなく
眞の菖蒲を乞われるか……