〜菖蒲君 弐〜

  届けられし 好いた女の想ひ知る
           ほどく和紙  くゆる香りの戀文か

     御簾の内に 足踏みいれる寸前の
             あどけない声に 思わず微笑む――




薄闇に 潜みし男が影ひとつ

       誰ぞ

    思草君の問いかけに
      扇で隠すかんばせと
         匂ふ直衣に ほくそ笑む

    菖蒲君の戀文を
      そのままお持ちになりましたな――



御簾の際まで近づきて
    その影すらを愛おしむ


    この容姿に惑うことなく
      異形の者と誹ることなく
        眞の菖蒲を乞われるか……

著作:紫草

NicottoTown サークル「幻想断片」より 企画・源氏遊び【平安編】 2017年10月

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