失敗した。
失敗した。
失敗した。
いい映画だったんだ。
でも、絶対泣くような映画じゃない。
それなのに、どうして涙が出てくるんだ。
一ヶ月振りに逢えたのに、かっこよく決める心算だったのに。
絶対、女々しいって思ってる。
顔なんて見られないよ。
どうして、あんな映画にしたんだ。
どうせなら、象の出てくる方にしときゃよかった。
あれなら絶対、彼女も泣いた。
あ〜もう遅い。
どうして、いつも、こうなんだ。
ふと、足音が聞こえないことに気がついた。
真っ赤な目をしてることも忘れ、慌てて振り返る。
・・嘘だろ……。
いつから、いなかった?
落ち着け、俺。
駅を出て、彼女の家へと歩き始めた。その時は確かにいた。
赤い目を見られたくなくて、先を歩いた。
そうだ、携帯。
――バッテリーが切れた。
昨夜、長く話した後で充電器に戻すのを忘れたっけ。どうせ逢うから必要ないと、予備の電池も持ってない。
ともかく来た道を引き返そう。
彼奴の気持ち、考えてなかった。大人しくて、大きな声を出さない奴。
きっと、今頃、何処かで泣いてる。
捜さなきゃ。
やっと見つけた、天使だから。
絶対、見つけてやらなくちゃ。
暫く歩くと、小さな街灯が見える。
ふと、その街灯の奥にある公園に目をやると・・・
見つけた、大事な大事な俺だけの天使。
よし!Kiss しよ。
【了】