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『ラブシーン』 2

 失敗した。
 失敗した。
 失敗した。

 いい映画だったんだ。
 でも、絶対泣くような映画じゃない。
 それなのに、どうして涙が出てくるんだ。

 一ヶ月振りに逢えたのに、かっこよく決める心算だったのに。
 絶対、女々しいって思ってる。

 顔なんて見られないよ。
 どうして、あんな映画にしたんだ。
 どうせなら、象の出てくる方にしときゃよかった。
 あれなら絶対、彼女も泣いた。
 あ〜もう遅い。
 どうして、いつも、こうなんだ。

 ふと、足音が聞こえないことに気がついた。
 真っ赤な目をしてることも忘れ、慌てて振り返る。
 ・・嘘だろ……。

 いつから、いなかった?
 落ち着け、俺。
 駅を出て、彼女の家へと歩き始めた。その時は確かにいた。
 赤い目を見られたくなくて、先を歩いた。

 そうだ、携帯。
 ――バッテリーが切れた。
 昨夜、長く話した後で充電器に戻すのを忘れたっけ。どうせ逢うから必要ないと、予備の電池も持ってない。
 ともかく来た道を引き返そう。

 彼奴の気持ち、考えてなかった。大人しくて、大きな声を出さない奴。
 きっと、今頃、何処かで泣いてる。
 捜さなきゃ。
 やっと見つけた、天使だから。
 絶対、見つけてやらなくちゃ。

 暫く歩くと、小さな街灯が見える。
 ふと、その街灯の奥にある公園に目をやると・・・

 見つけた、大事な大事な俺だけの天使。
 よし!Kiss しよ。
【了】

著作:紫草

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