「時に落ちる」番外編
深夜。
真夜中。
落ちて来て、何日たったろう。
闇夜の中で一番私を安心させてくれるもの、それは仁の鼓動。
でも、今夜のように急患があると彼は出かけてゆく。
当然だ。
残される私。
漆黒の夜、ざわざわ心が騒ぐ。
コワイ・・。
そんな時、いつになく明るい月明かりが私に降り注ぐ。
月って、こんなに大きかったっけ。
縁側に座り込み、ひざをかかえる。
♪う〜さぎ うさぎ 何見て跳ねる
十五夜 お月様見て跳〜ねる♪
「眠れないの?」
月を見上げている私に、帰った仁が声をかける。
背中に聞いた仁の声。
思わず瞳に涙が潤む。
仁の鼓動を聞きたくて、私は彼の胸へと飛び込んでいった――。
【了】