晴れ渡る空。
 この天気も何日持つだろう。
 もう少しすると、梅雨がくる。

 じめじめ、じめじめ。
 祖母が「洗濯物が乾かない」と、小言を云う季節。いつもの季節。
 でも、今日は五月晴れ。
 何だか、この大空を飛び立てそう。
 私は鞄を下に置き、両腕を思い切り真上に伸ばした。
 気持ちいい〜。

「花穂。玄関先で何してるの。そろそろ行かないと乗り遅れますよ」
 振り返ると、祖母が洗濯物をカゴに入れ、立っている。
 あらら、そんな時間?
 私は、いつもの挨拶をいつものようにする。
 祖母もいつもと同じように、私を気遣う言葉を掛けてくれる。
「はい」と返事をし、改めて鞄を手に足を踏み出した。

 いつもの風景。いつもの会話。そして、いつもの癖で時計を見る。
 やばい。
 今日は少し急がなきゃ。おばあちゃんの云ったことは正しい。

 私、神木花穂(かみきかほ)。
 今年、高校に入学したばかりの十六歳である。

著作:紫草

inserted by FC2 system