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『キスシーン』[

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「この蔵に…、伯母ちゃんが住んでた」
 瑠璃は囁くような、言葉にするのが目的ではないような小さな声で呟いた。
 それは聞こえてはいたけれど、あえて無視して忠告する。
「親父が、中には絶対入るなって」
 分かってる、と瑠璃は言いながらも扉に近づいてゆく。
「おい、瑠璃」
 手をかけそうになったところを、慌てて掴んで引き戻した。

 不思議そうな顔をする。
 どうして、そんな無防備なんだ。
「みっちゃん、どうしたの」
「蔵に…、お前が蔵に取られそうだと思った」
「何、それ」
 そう瑠璃は笑ったが、本当に扉の中に吸い込まれるお前をイメージしてしまったんだ。

著作:紫草

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