大昔。
空に我等、龍神が多く飛び交ふ、その下に――
『思ひ出語り/天界32』
〜氷輪〜
天帝はいつまでも宮殿を離れることはなく、要の部屋の友との語らいをやめることもない。
浮島も、そこに在る。
冬の氷輪が如く、痛いくらいに澄んだ空気の中に皓々と光る。その姿は、浮島とは思えぬほど美しかった。
そして時折、ザキーレとリューシャンの魂の聲が戯れているように聴こえてくるという。
最早、天界の何処にも、彼らの欠片は残っていないというのに…
それはまた別の機会の話であり、それを語るのは、別の者の務めとなろう…
【了】
著作:紫草