大昔。
空に我等、龍神が多く飛び交ふ、その下に――
全ては終わった。
どんな気が向いたのか。シヴァは、此処を残すようだ。
先日、迦楼羅の声を聞いたのだと云っていた。
それが、どんな影響を齎(もたら)したのか…
しかし少なくとも、迦楼羅のことがなければ此処は滅されただろう。
シヴァは、この天界を、
『たかが箱庭だ』
と云う。
でも、その箱庭を、神は見捨てることはなかった。
いつの間にか、天帝が治める筈だったものが狂っていた。
そう…
アニヨンと呼ぶ友が去った時、腹心の部下ともいうべき仲間が去っていった時、副帝が封印に仕掛けを施したと知った時…
天帝は無意識に気付かない振りをした。
何かが狂い始めたと、もっと早くに気付けば此処は別の形になったのだろうか。
しかし、今更何を云っても遅いのだ。
この後、この天界は神々の意志のもと、形を変えてゆくだろう。
ただ、天帝がこの地に残ることだけは許されるらしい。
この浮島も、ヴィシュヌ神の祠がある限り、そして白虎が離れぬ限り、そこに在り続けるだろう。
ジュラも黄竜として地に下った。戻ってくる者はいなくなった。
白虎は、いつもの場所に居る。
もう二度と、彼らのような者に遇うことはないだろうと思いながら。
全ては、終わったのだ。
それはまた別の機会の、お話ということで…
【了】