ぶんぶんぶん
蜂が飛ぶ
お池の周りに野薔薇が咲いたよ
朝露きらきら
野薔薇が揺れるよ
ぶんぶんぶん
蜂が飛ぶ
作詞 村野四郎
巣箱に群がる蜜蜂を、毎朝眺めている人間。
何が面白いというのだろう。
吾は、ただただ蜜を運ぶ。
人間の言葉を借りると、働き蜂だったか。
面白いから、そやつの頭近くをぐるりと一周してみた。
払う素振りも見せず、吾の羽音に耳を澄ましているようにも見える。
この薔薇園は、この人間の道楽とやらだそうだ。
見事な薔薇は植えられたものではなく、野生の薔薇を覆うように他の花と区別された。
誰に聞かせているのか。
この人間は、いろいろなことを話している。
巣箱におられる女王蜂という名の、姉妹。
吾は花の蜜を集め、そして運ぶ。
間もなく終える生涯の、ほんの少しの戯れ。
この人間は、明日も巣箱を覗くだろうか。
これまで毎朝、やってきたように。
さすれば、吾はそなたを忘れず仲間に教えてやろう。
この人間は仲間を傷つけることはない。
いつまでも、この巣箱を大切に守ってくれるだろう、と。
働き蜂…
間もなく終えるこの命の、その果てにそなたの顔を見ていたい――。
〜おしまい〜