『黒うさぎ』



冬になると
あたりは一面 銀世界
仲間のうさ達 みんな真っ白 白うさぎ
なのにいつもひとりだけ 黒うさのまま 冬を越す
人との狭間で生きる 黒うさ

あの父娘がやっているのは おでん屋さん
食べ物の減ってしまう冬の時期 みんな こそこそやって来る
おなかを空かせた獣たち 山に迷った人間たち そして仲間のうさ達が
みんな仲良く おでんを食す

ボクたちのことば いつもは全然聞こえないのに
迷子になってしまった人間だけは分かるんだ
だから人の世界への帰り道を 『内緒だよ』って教えてあげる
もう二度と 会えないと知っているから……
でも今だけは 同じ屋台のお客さま


がんもに大根 人参 はんぺん
ふわ〜 っと湯気もついてくる 美味しい美味しいあたたかおでん
そうそう
うさ仲間のいっちゃんは おしゃけもちょっぴり飲んじゃうの

冬になっても黒い毛のまま 冬を越してる黒うささん
お客さまからのプレゼント 黒いぬいぐるみを腕に抱き
黒仲間だよ と笑ってる
今年も商売繁盛の 冬将軍がやってきた

〜おしまい〜

著作:紫草

NicottoTown ブログ広場より「冬にオススメな小説」より 1/16
back next
inserted by FC2 system