大昔。
空に我等、龍神が多く飛び交ふ、その下に――
地面が動いた。
それも天上界全体を揺らす程の大きな揺れで。
「何があった」
長が、水鏡を覗く。
果たして地上界も、大地震に見舞われていた――。
龍族の統べる天上界。
この揺れは天上界だけのものではなさそうだった。
長老の一人が、近づき告げる。
「リューシャンに何かあったかの」
それは長の脳裏にも浮かんだことだった。
「ヴィシュヌを呼ぼう。どの道、此処も維持神の力が必要だ」
長老が分かったと去ると、入れ替わるように多くの龍が集まってくる。
何が起きたのか。
それを探ることは後回しにするしかなかった。
ヴィシュヌは世界の維持を司る、最高神のひとり。
シヴァ程世界と関わりを持つことはないが、ブラフマー程無関心でもない。
現在、どの世界も彼の力を必要とした。
珍しく駈け巡る神は、四神に力を借りている。
其々に住まう四神は力を貸す。そうしなければ間に合わない程の衝撃を起こした何かがあった。
それは、やはり、リューシャンかもしれない。
長の内に予感が走る。
そうしていても、龍たちからの連絡は続々と入る。
山の一つが崩壊した。この天上界では、それが一番の被害だろうということだ。
ヴィシュヌを待つだけでは耐え切れないかもしれない。
長は玄武の力を借りる為、数百年振りに北の山を昇ることとした。
それはまた別の機会の、お話ということで…
【了】