大昔。
空に我等、龍神が多く飛び交ふ、その下に――

『思ひ出語り/地上界46』
青龍刀2〜母という名の鬼〜

 青龍刀が砕けた…、否、散った。
 迦楼羅を斬ったつもりだったのに、突然、露智迦が現れて。

 刃を止めることはできなかった。
 真横に、迦楼羅の首を狙った刀は、そのまま露智迦の首を薙ぎ払った。
 手ごたえは確かにあった。
 すると目映い閃光のようなものが起こり、そして刀が粉々に砕け散った…。

 源泉のように噴出す、露智迦の血。そして、その真っ赤な血飛沫の中に二人は沈んでいった――。

 そんなに迦楼羅が大事か。
 何故、迦楼羅なのだ。
 何が違うというのだ。

 母という名の女は、いつしか鬼に成り果てた。
 その絶叫は、最愛の露智迦を斬ったからなのか。最愛の男を迦楼羅に取られたからなのか。
 どちらにしろ、長は母を封印した。否、封印という名の死を与えた。

 しかし、おばあが気付いた時には露智迦はすでに事切れていた、最愛の迦楼羅の腕のなかで――。

 それはまた別の機会の、お話ということで…
【了】

著作:紫草


back 草紙〜地上界目次 next

inserted by FC2 system