『ささらぐ小川の畔にて』

 樹海の向こうに在ったもの、それは山の神の領域だった――。

 神に愛でられ生きる者、それは独りの女の子…… 否、“ひな”という名の女だ。
 足を踏み入れた“海”の名を持つ自分は、山の神に許されたのだろうか。
 それとも、“ひな”の最后の男に選ばれたのか。

 都会に疲れ生活に疲れ、自分を捨ててきた筈だった。
 なのに“ひな”の近くにいると、自然と力が湧いてくる。
 やがて“ひな”は神に召され、自分は現実社会へと戻ってきた。
 しかし、それまでとはまるで違って見える世界。
 今まで三年、いったい何処にいたんだと問いかける友に、海は自信を持って答えてた。
「愛する女と、山の神の懐に――」 *
【終わり】

著作:紫草

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