大昔。
空に我等、龍神が多く飛び交ふ、その下に――
あの日。
都から付いてきた女を連れ帰った男は、そのまま女と暮らし始めた。
孤児同然の女は村の者とも比較的、すぐに打ち解けた。姿なんて関係ない。力なんて関係ないと。そして人が寄り添って暮らすのは楽しい、とも。
伽耶は男の親友であり、長とは別に村を統べていた。
その伽耶が、男を笑う。
「お前が人の女を相手にするとは思わなかった」
と。
やがて女が男の種を孕んだ、と悟る。
長やおばあは喜んだ。勿論、男も喜んだ。力のある者の子を孕むと命を落とす人は多かった。
が、女は身ごもったまま、ちゃんと生きていた。
このまま赤子を産み落とし、村での幸せな暮らしが続くと信じていた女は、この後の己の変貌を想像することができたろうか…。
そんな頃。
突如、天界へと呼び戻される男。
一体何が起こったのか。まるで分からぬまま、彼は天へと還って往った。
残された女の許に、男の親友だという男が遣わされる。
彼は、その名を露智迦と云った――。
露智迦と名乗る、この男とも親友であった伽耶は久方振りの再会を喜んだが、女もまた、彼に恋心を募らせてゆくことになろうとは、この時はまだ誰も予想だにしていない。
それはまた別の機会の、お話ということで…
【了】