大昔。
空に我等、龍神が多く飛び交ふ、その下に――

『思ひ出語り/地上界48』
迦楼羅19〜絶叫〜

 やがて露智迦の体から、体温が奪われてゆく。
龍
 空気を切り裂く、迦楼羅の絶叫。
 涙はない。
 ただ、叫ぶ。
 消えず、そこに残る露智迦の体を抱き、迦楼羅は叫び続けた。
 その迦楼羅に呼応するかのように、辺りを蔽い尽くしていた多くの木々が一斉に花を散らしていった――。

≪私を消せ≫
 ぼそりと呟いた、迦楼羅のその言葉を、しかし誰一人聞き取ることはなかった…。
 ただ独り。
 遠く離れたシヴァを除いて…。

 それはまた別の機会の、お話ということで…
【了】

著作:紫草


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